東京地方裁判所 昭和39年(レ)294号 判決
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〔判決理由〕「次に、控訴人は、同人が代物弁済により本件建物の所有権を取得したのに従い民法第八七条第二項により本件土地一〇〇坪の賃借権をも取得したと主張するので考える。
民法第八七条にいわゆる主物、従物が物の間の関係であることは被控訴人主張のとおりであるが、物と権利あるいは権利と権利の間にも同様の経済的、社会的な従属結合関係が成立する場合があり、そのような場合には民法第八七条を類推適用するのが相当である。
さて、今日、とくに東京のような都市においては土地賃借権の価格が極めて高く、土地価格の五割ないし九割にも及び、したがつてその地上の建物の価格よりも高いことが稀れでないことは当裁判所に顕著な事実である。そして、この傾向は最近における土地価格の謄貴により一層著しくなつている。現に、当審鑑定人石川市太郎の鑑定の結果によれば、昭和四〇年五月下旬における、本件建物の(借地法第一〇条にもとづく買取請求の)価格は金三二八〇〇〇円相当であるが、本件土地一〇〇坪の賃借権価格は金一〇〇万円相当であることが認められる。
しかしながら、右土地賃借権の経済的価格は、その自由な譲渡が今日いまだ認められるに至つていない結果、極めて限られた場合にしか発揮されないのである。すなわち、原則としてなお賃貸人の承諾がなければ土地賃借権の譲受人は賃貸人に対抗できず、また承諾なしに賃借権の譲渡がなされたときは賃貸人は賃貸借契約を解除することができるとされている結果、承諾が得られない場合の譲受人の賃借権の価格は無に等しいものというべく、賃借権の経済的価値は流通面において著しく制約されているものといわなければならない。さらに、人間への効用という面からみても、建物は居住営業などにおいて、人間生活に直接に役立つが、建物所有のための土地の賃借権はその賃借地上に建物が存在することにより人間生活にいわば間接に役立つもの、いいかえれば建物所有のための土地賃借権は建物の常用に供せられているものとみれるのである。
したがつて、建物とその敷地の賃借権との間にはいわゆる主物、従物の関係に類似した関係があるものというべく、建物の所有権が移転すれば民法第八七条第二項の類推適用により右移転に従つて敷地の賃借権も移転するものと解するのが相当である。このように解することは、建物の所有権を他へ譲渡した土地賃借人の通常の意思にも合致しているものと思われる。
もつとも、建物所有権の譲渡に従つて移転する土地賃借権の範囲は、必ずしも譲渡人の有していた賃借権の全部に及ぶものと解すべきではなく、その建物の敷地として必要な部分に限られるものと解するのが相当である。してみれば、本件においては控訴人が昭和二五年四月二八日代物弁済により本件建物の所有権を取得したのであるから、その取得に従い小島松次の有していた本件土地の賃借権をも取得したものであるが、その範囲は本件建物の敷地として必要な部分に限られるべきである。 (西山要 西川豊長 上田 豊三)